【コラム】マイコンに「2番」を与えた朽木塔樹の思慮遠謀
今期初旬、マイコンのラ・キクチーナ入りが、決まった。背番号は「2」。キクチーナの2番と言えば、クラブレジェンドであるヨハン・ミャルビーの背中で始まり、それ以降、安藤ラテ、カハ・カラーゼ、ルッシオとキクチーナを象徴する名DFへ受け継がれてきた栄光の背番号である。
シャビ・アロンソ+マイコンという破格のトレードでFCたけぷーるへと去ったルッシオは、圧倒的DF力に加え、攻撃にも絶大なる貢献を果たす、自他ともに認める「世界屈指のCB」。片や、アロンソのおまけという形で手に入れたマイコンは、奇妙な歌(“マイコン”と言っているように聞こえる)を口ずさみながら、無駄に高いスタミナで絶え間なく上下動を繰り返す「自称仕事人」。一見すると理解に苦しむこの『2番交代劇』には、朽木による「一大ギャンブル」どころか、ルッシオを失ったキクチーナの「降伏宣言」という手厳しい意見まで聞かれる。
【マイコンの一撃でスタジアムは静まり返る。】
ところが、マイコンは瞬く間にチームにフィットする。キクチーナデビューとなった一戦でマイコンがピッチに立った。この時、ファンはまだ彼を懐疑的な目で見ていた。あんな奴にルッシオの代わりが務まるはずがないと。
しかし、その瞬間はすぐに訪れた。
キクチーナのカウンターチャンス。前方には大きなスペースが広がっている。ハーフウェイラインを越えたところでメラリからのボールを受けたマイコンが、ドリブルを始めた。
その刹那Sergio
Echigoは静まり返った。-スピード感が違う-
マイコンはスピードを落とすことなくペナルティエリアに進入して、そのままシュート。移籍後初ゴールは、相手選手だけでなく、味方をも置き去りにしたスピードによって生み出された。それはファンの心をつかむと同時に、ルッシオという偉大な残像を凌駕する一撃となった。
【朽木監督も絶賛するキクチーナの両翼。】
相手選手がうなだれる傍らで、マイコンとメラリが抱擁をかわす。そのコントラストが、Sergio
Echigoの中で、ひときわ輝いて見えた。キクチーナ・ファンのプライドをくすぐる名シーンが生まれた瞬間だった。
こうして、マイコンとメーラリが両翼を担い、ルニ山、Cが絡む強力な攻撃ユニットが完成した。朽木監督は誇らしげだ。
「このグルーヴ感、そしてキモさ。マイコンとメラッリのようなコンビは、見たことがないね。我がチームの両ウイングはストロンガー最高のレベルにある」
キクチーナはストロンガーの舞台で羽ばたく翼を手に入れた。そう朽木監督が断言したくなるほど、マイコンとメラーリの存在感は圧倒的だった。
【完璧な夜】
試合のあと、マイコンの入団会見が行なわれた。付き添っていた綾瀬はるかが断りをいれる。
「マイコンはまだ言葉をうまく話せません。聞き取りにくい点もあるかと思いますが、よろしいですか?」
記者たちが期待の面持ちで見つめるなか、ヒーローは流暢なしゃべりで感想を述べていく。
「今日は特別な夜になったよ。メラリーともうまくやれたしね。ただ、あの野郎はどこ見てるか分からないから正直、気持ち悪いんだよ」
初めてキクチーナの一員として戦った感想を、マイコンはリラックスした表情で語った。その後は、質疑応答。あっという間に時間は過ぎていった。そして、最後の質問が投げかけられた。
「ところで、好きな言葉ってあります?」
「むきゅー……」とマイコンは表情を曇らせた。それでも、記者は食い下がる。
「何か、本当になんでもいいんで……」
マイコンは、試合で見せたプレーと同様に鋭く切り返した。
「俺は仕事が好きだああああああああああああ!!!マイコン♪マイコン♪仕事がすきー♪」
「歌は歌わなくて結構ですので……」
それでもマイコンは続ける「マイコン♪マイコン♪仕事がすきー♪」
「だから!……」
気が付くと会場の記者たち全員が一体となりその歌を口ずさみ、歌声が響き渡っていた。その大合唱の余韻の中でマイコンは会場を後にする。マイコンの完璧な夜はこうして幕を下ろしたのだった。